法人携帯やスマホを新しく購入したとき、経費処理をどう扱えばよいのか迷ったことはありませんか。
結論として、取得価額が10万円未満なら全額経費にできますが、10万円以上になると原則として減価償却が必要になり、2026年度の税制改正でその基準自体も大きく変わっています。
この記事では、経理の現場で長年にわたり数多くのコスト管理に携わってきた視点から、法人携帯・スマホの経費処理を整理します。
法人携帯・スマホの経費処理は何で決まるか?
経費処理の方法は、端末の取得価額がいくらかによって、全額経費・分割経費・減価償却の3パターンに分かれます。
この基準を知らないまま処理をしてしまうと、決算のタイミングになって後から大きな修正が必要になることもあります。
金額でどう扱いが変わるか?
取得価額が10万円未満なら、購入時に全額を経費として計上できます。
- 10万円未満:購入時に全額経費
- 10万円以上:原則として減価償却
10万円という金額は、消費税の扱いによって税込か税抜のどちらで判定するかが変わる点にも注意が必要です。
税込経理を採用している会社と税抜経理を採用している会社とでは、同じ端末でも判定結果が変わることがあるため、まず自社の経理方式を確認しておく必要があります。
金額帯ごとの扱いを一覧にすると、次のようになります。
| 取得価額 | 原則の処理 |
|---|---|
| 10万円未満 | 購入時に全額経費 |
| 10万円以上20万円未満 | 一括償却資産として3年均等償却も可能 |
| 20万円以上40万円未満 | 特例対象なら一括経費、対象外なら減価償却 |
| 40万円以上 | 原則として減価償却 |
10万円以上20万円未満の端末には、通常の減価償却以外に一括償却資産という選択肢もある点は見落とされがちです。
一括償却資産は白色申告でも使え、償却資産税もかからないため、少額減価償却資産の特例より条件が緩やかです。
月割り計算が不要で、期中に購入してもその年から取得価額の3分の1を経費にできる点も、実務上のメリットです。
そもそも減価償却とは何か?
減価償却とは、高額な資産の購入費用を耐用年数に応じて複数年に分けて経費計上する会計処理のことです。
一括で経費にできないからといって、お金が余計にかかるわけではない点は誤解されがちです。
キャッシュの動きと会計上の経費計上のタイミングは、必ずしも一致しないということを理解しておくと混乱しにくくなります。
10万円以上のスマホはどう処理すればいいか?
10万円以上のスマホは、原則として「器具及び備品」として資産計上し、耐用年数に応じて減価償却します。
勘定科目を誤ると決算書の見え方そのものが変わってしまうため、購入時点で正しく仕訳しておくことが何より大切です。
スマホの法定耐用年数は何年か?
スマートフォンの法定耐用年数は、税務上でおおむね4年とされています。
4年かけて少しずつ経費化していくため、購入した年の決算だけを見ると、利益が大きく見えてしまう点に注意が必要です。
分割払いなら経費処理は変わるか?
分割払いを選んでも、経費計上のタイミングは支払い回数ではなく、端末を事業で使い始めた時点で判断されます。
分割の途中で処理方法を後から変えられるわけではないため、購入前に一度しっかり確認しておくと安心です。
- 耐用年数は原則4年
- 経費計上は使用開始時点で判断
分割払いの残債と会計上の経費処理は別物だと考えると、混乱しにくくなります。
具体的な計算例はどうなるか?
たとえば16万円のスマホを定額法で減価償却する場合、耐用年数4年として毎年およそ4万円ずつ、4年間かけて経費計上します。
| 年目 | 経費計上額の目安 |
|---|---|
| 1年目 | 約4万円 |
| 2年目 | 約4万円 |
| 3年目 | 約4万円 |
| 4年目 | 約4万円 |
事業年度の途中で購入した場合は、使用月数に応じて初年度の金額が月割りで少なくなる点も覚えておく必要があります。
少額減価償却資産の特例とは何か?
少額減価償却資産の特例を使えば、青色申告の中小企業は一定額未満の端末を購入時に一括で経費計上できます。
対象になる中小企業の条件は何か?
この特例の対象は、青色申告書を提出する中小企業者等であり、常時使用する従業員数が一定人数以下の法人に限られます。
白色申告のままの会社はそもそもこの特例を使えないため、青色申告への切り替えを検討する価値があります。
- 青色申告書を提出していること
- 従業員数が基準以下であること
貸付用の資産については、2022年4月以降この特例の対象外となっている点にも注意が必要です。
従業員に貸与するだけの通常利用であれば、この対象外規定に該当することはまずないため、過度に心配する必要はありません。
年間の上限額はいくらか?
特例を使って一括経費にできる金額は、1事業年度あたり合計300万円が上限です。
複数台まとめて購入する場合は、この上限額を超えないよう年度をまたいで計画的に購入するという工夫も有効です。
台数が多い会社ほど、購入時期を年度ごとに分散させる計画性が求められます。
2026年度の税制改正で何が変わったか?
2026年度の税制改正により、少額減価償却資産の特例の対象金額と適用期限が引き上げられました。
この改正を知らずに古い基準のまま処理を続けている経理担当者は、周囲を見ていても今なお少なくありません。

金額の上限はどう変わったか?
対象となる取得価額の上限が、従来の30万円未満から40万円未満へと大きく引き上げられています。
高性能なハイエンドモデルのスマホでも、この特例の対象範囲に収まりやすくなったということで、選べる機種の幅も実質的に広がりました。
- 2026年3月31日まで:30万円未満
- 2026年4月1日以降:40万円未満
この引き上げにより、これまで減価償却が必須だった価格帯のスマホも、一括経費にできる可能性が大きく広がりました。
適用期限や従業員要件はどう変わったか?
特例の適用期限は3年延長され、対象となる中小企業者等から常時使用する従業員数が400人を超える法人が除外されることになりました。
従業員数の要件がやや厳しくなった一方で、金額基準はより大きく緩和されたというのが今回の改正の特徴です。
- 適用期限を3年延長
- 従業員500人超から400人超の除外に変更
古い30万円基準のまま処理をしている経理担当者は、意外と少なくありません。
税制改正の情報は年度替わりのタイミングで見落としやすいため、購入前に最新の基準を確認する習慣が欠かせません。
個人事業主の場合はどう違うか?
個人事業主の経費処理は法人とほぼ同じ考え方ですが、プライベート利用がある場合は家事按分が必要になります。
金額基準や耐用年数の考え方自体は、法人でも個人事業主でも変わりません。
家事按分とはどういう処理か?
仕事とプライベートの両方でスマホを使う場合、業務で使用した割合に応じて経費を按分する必要があります。
法人携帯であれば、この按分計算そのものが不要になる点は個人事業主にとっても検討材料になります。
家事按分の割合はどう決めればいいか?
通話履歴やアプリの利用時間などをもとに、できるだけ合理的な根拠を持って按分割合を決めることが求められます。
- 通話履歴から業務利用割合を推定
- アプリの利用時間を参考にする
按分割合に明確な正解はありませんが、税務調査を見据えて日頃から根拠を残しておくことが大切です。
業務利用が7割程度であれば、7割を経費、残り3割を家事按分として処理するのが一般的な考え方です。
按分の根拠として、業務用の連絡先や通話記録を証拠として日頃から残しておく経営者も少なくありません。
法人携帯ならではの経理メリットは何か?
法人携帯を使えば、個人携帯のような家事按分の手間そのものをなくせるという経理上のメリットがあります。
経費処理の観点だけを見ても、法人携帯へ切り替える理由は十分すぎるほどあります。
請求が一本化されるとどう楽になるか?
法人名義の請求書があれば、そのまま全額を経費として処理でき、従業員ごとの按分計算が不要になります。
毎月の経費精算のたびに1件ずつ按分計算をしていた頃と比べると、確認作業にかかる時間は大幅に短縮されました。
法人携帯契約のメリットでは、経理業務の効率化について詳しく解説しています。
台数が多い会社ほどメリットは大きいか?
従業員数が多い会社ほど、按分計算の手間そのものが積み重なるため、法人携帯へ切り替えるメリットは大きくなります。
- 按分計算がまるごと不要に
- 請求確認の時間を大幅短縮
経理担当者が1人しかいない小規模な会社ほど、この手間の削減効果は実感しやすいはずです。
社用スマホ全般の導入メリットもあわせて確認すると、経費面以外の判断材料もさらに増えます。
リースと購入で経費処理はどう違うか?
リースと購入では、経費処理のタイミングと会計上の扱いが大きく異なります。
どちらが自社に合うかは、経理の手間とトータルコストのどちらを優先するかによって変わってきます。
リースの経費処理はどうなるか?
リース契約の場合、月々の利用料をその都度全額経費として計上できるため、減価償却の手間がかかりません。
固定資産台帳への登録や耐用年数の管理そのものが不要になる点は、経理担当者にとって大きな負担軽減です。
購入との使い分けはどう考えればいいか?
法人携帯のリース・レンタルのメリット・デメリットを確認すると、経費処理のシンプルさも含めた比較ができます。
- リースは経費処理がシンプル
- 購入は資産として自由度が高い
| 比較項目 | リース | 購入 |
|---|---|---|
| 経費処理 | 月々全額経費 | 減価償却が必要 |
| 資産管理の手間 | 不要 | 固定資産台帳での管理が必要 |
| 途中解約 | 違約金が発生しやすい | いつでも自由に処分可能 |
短期的に経理の手間を減らしたいならリース、長期的にコストを抑えたいなら購入がそれぞれ向いています。
自社がどちらを優先したいかによって最適な選択は変わってきますので、まずは両方の見積もりを取って比較することをおすすめします。
経費処理を間違えるとどんなリスクがあるか?
経費処理のミスは、税務調査で指摘を受け、追徴課税につながるリスクがあります。
金額の判定を誤るだけで、後から修正申告が必要になることも珍しくありません。
よくある間違いにはどんなものがあるか?
10万円以上の端末を全額経費にしてしまうミスは、経理担当者の間でも起こりやすい間違いの1つです。
- 10万円以上を全額経費に計上
- 古い金額基準のまま特例を適用
実際に、営業部から届いた12万円のスマホの請求書をそのまま全額経費として処理してしまい、決算のタイミングで減価償却への修正が必要になったことがあります。
金額を確認する一手間を惜しんだせいで、後から仕訳を訂正する二度手間になってしまった苦い経験でした。
それ以来、10万円前後の請求書は必ず税抜・税込の両方で金額を確認するというルールを自分の中に作りました。
ミスを防ぐにはどうすればいいか?
法人携帯の料金プランを比較する際に、端末価格と経費処理のルールをあわせて確認しておくと安心です。
購入前に金額基準を確認する習慣をつけておくだけで、こうしたミスの多くは防げます。
特に決算期をまたぐ購入は、月割り計算や適用年度の判断を誤りやすいタイミングなので要注意です。
- 購入前に金額基準を確認
- 不明点は税理士に事前相談
判断に迷う金額の場合は、自己判断で処理を進めず、顧問税理士に一言確認するだけでも十分な安心材料になります。
まとめ:「法人携帯・スマホの経費処理」
法人携帯・スマホの経費処理は、取得価額が10万円未満か以上かで大きく扱いが変わります。
2026年度の税制改正により、少額減価償却資産の特例の対象金額は40万円未満まで引き上げられました。
ポイントを改めて整理すると、次のようになります。
- 10万円未満は購入時に全額経費
- 特例を使えば40万円未満も一括経費に
- リースなら減価償却の手間自体が不要
経理の現場で数多くのコスト管理を見てきた立場から言えば、古い金額基準のまま経費処理を続けている会社ほど、見直しによって得られるメリットは大きいと実感を込めて感じています。
- 金額基準は数年単位で見直される
- 購入のたびに最新情報を確認する
金額基準は数年単位で見直されるため、購入のたびに最新情報を確認する癖をつけておくと安心です。
端末選びやプラン比較の際は、経費処理のルールも合わせて確認してみてください。
金額基準を正しく理解しておくだけで、無駄な税負担や後からの修正申告の手間を避けられます。


